エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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回想のライブラリー

回想のライブラリー  初岡昌一郎著 / オルタ出版室 2025.9

 2006年まで姫路獨協大学教授を務められた初岡昌一郎さんからご著書をいただきました。

 著者は1935年岡山県に生まれ、国際基督教大学在学中に日本社会党青年部の活動にのめりこみ、卒業後に社会主義青年同盟(社青同)結成準備会専従役員となります。学生時代に乱読生活を過ごしたという通り、本書は著者の自伝であると同時に、読書履歴の書でもあります。
 本書の元となったエッセイは『月刊メールマガジン「オルタ」』に2005年7月から20回にわたって連載されました。書評として書くことを編集者の加藤宜幸さんから要請されたのに対して、読書と人間関係における出会いを回想する私記を書くことにしたのだといいます。元のエッセイを編集者が構成し直し、著者の人生時系列やテーマごとに組み直してできあがったのが本書です。

 読書の履歴はそのまま著者の思想遍歴でもあります。また、世界の様々な国で多くの人々と出会った時の思い出話とともに紹介される図書の数々も、読んでみたいと思わされるものが多く、興味をそそられます。本書で取り上げられる図書の多くが書影つきなので具体的にイメージしやすく、本の顔が見える紹介文はやはり魅力的だと実感しました。

 著者は社青同の内紛に嫌気がさして辞めたあと、ユーゴスラビアのベオグラードに留学します。1964年10月に帰国して郵便局の労組である全逓信労働組合(全逓)の書記局に入職しました。その後、全逓が加盟していた国際組織 (PTTI)のスタッフとして20年あまり、国内外 において労働組合運動で働くことになったのでした。その後、姫路獨協大学教員となり、外国語学部長に就任、定年まで勤めます(下の略歴参照)。

 この間に訪れた韓国、中国、台湾、ソ連、フィンランド、フランス、ポーランドなどなど、様々な国の様子や交流のあった人々の思い出や現状も語られます。ある意味、「とりとめもなく」と言えそうですが、その分とても読みやすいエッセイであり、旅に出たくなったり本を読みたくなる、そう、文化の香りがするのであります。

 わたしは個人的に、初岡さんが卒業された「津山基督教図書館高校」にいたく関心をもちました。図書館高校なんてあったんだ!と驚いたのです。この高校は今は存在しないようですが、もっと詳しく知りたいとも思いました。(谷合佳代子)

◆著者・初岡昌一郎氏略歴(奥付より)

1956年 津山基督教図書館高校卒業
1959年 国際基督教大学卒業
1959年 社会主義青年同盟結成準備会専従役員
1963-64年 ベオグラード大学法科大学院留学
1964-72年 全逓信労働組合本部書記局員
1972-89年 国際郵便電信電話労連東京事務所長
1989-2006年 姫路獨協大学教授
現在,ソーシャル・アジア研究会主宰