エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

当館資料の活用成果「家族賃金観念の形成過程」

 当館所蔵資料を利用した研究成果がまた一つ公開されました。社会政策学会の機関誌『社会政策』に掲載された最新の論文です。

 法政大学の梅崎修先生を代表とする科研費プロジェクトの成果でもあります。

 

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  本稿の目的は、「人権争議」として名高い近江絹糸争議(1954年)朝護における近江絹糸紡績株式会社の「賃金体系をめぐる交渉過程を分析し、日本企業における「家族賃金」観念がどのように形成されたのかを考察すること」(p.113)です。

 そのために使われた一次資料が当館所蔵の「辻保治旧蔵近江絹糸労働組合資料」(通称辻コレクション)や、近江絹糸労働組合長浜支部長だった故中村幸男さんの日記や、彦根支部長(のち、組合長、彦根市議、滋賀県議)だった朝倉克己さんのオーラルヒストリー記録なのです。

 「家族賃金」とは男性一人の賃金で家族を養い、妻は家事育児に専念するというジェンダーバイアスがある賃金体系のことを指します。こういう男女差別的な賃金を、人権争議を経験した労組が提案するということは何を意味するのでしょうか。

 その実際を、一次資料から探っていくのが本稿です。その結果、「賃金体系をめぐる労使交渉の中で結婚や家族がどのように議論されたのか」が分析されています。

 興味深いことに、近江絹糸労組が提案した男女別賃金体系は上部団体である全繊同盟から批判され、結果的に男女同一の賃金体系に戻されています。

 ふんだんに引用されている労組の職場新聞や議事録等から拾える文言が、当時の社会意識を反映していて、とても面白いです。

 なお、114p.右段下から9行目「近江絹糸では、人権争議直前に文化サークル運動が活発化していた」の部分は、「直後」の誤記ではないかと感じました。誤記とまでは言えなくても、この部分は前後の文脈から「近江絹糸内には争議直前から文化サークルがあった」と誤読されるおそれがあります。その点は既に著者に伝えてあり、いずれ単行本としてまとめられるときに適宜補記されることとなるでしょう。(谷合佳代子)

「「家族賃金」観念の形成過程 ―近江絹糸人権争議後の交渉を対象に―」

共著:梅崎修(法政大学)、南雲智映(東海学園大学)、島西智輝(東洋大学)、下久保 恵子(当館)

社会政策学会編『社会政策』11巻3号、2020年3月. ミネルヴァ書房 

 

新着雑誌です(2020.3.25)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。

労政時報 3990号 2020.3.27 (201371341)

賃金事情 No2801 2020.3.5 (201371374)

労務事情 No1402 2020.3.15 (201371226)

ビジネスガイド No884 2020.4.10 (201371333)

労働経済判例速報 2401号 2020.2.20 (201371390)

労働経済判例速報 2402号 2020.2.29 (201371259)

労働経済判例速報 2403号 2020.3.10 (201371283)

労働経済速報 2404号 2020.3.20・30 (201371317)

賃金と社会保障 1748号 2020.2.25 (201371408)

旬刊福利厚生 No2289 2020.2.11 (201371366)

地域と労働運動 233 2020.1.25 (201371424)

 

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新着雑誌です(2020.3.12)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 3989号 2020.3.13 (201371309)

賃金事情 No2800 2020.2.20 (201371275)

労務事情 No1401 2020.3.1 (201363223)

人事実務 No1206 2020.3.1 (201363280)

労働判例 No1214 2020.3.1 (201371218)

労働法学研究会報 No2712 2020.3.1 (201363256)

企業と人材 No1085 2020.3.5 (201371242)

 

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3月31日までのご来館利用の一部制限について

 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当館のご利用は3月5日から3月31日まで下記の通りとします。


◆入館・閲覧等は事前予約のある方のみ
◆サポート会員さまには会員証をご提示ください
◆非会員のかたは来館に先立ち、ご利用日時と閲覧希望資料をご連絡ください
◆バザーは休止します
◆電話やメールによるお問合せは受け付けます

◆サポート会員への郵送貸出は可能

 

※エル・おおさか1階エレベーター前に手指の消毒薬が用意されていますので、ご利用ください

 状況は日々変化していますので、最新情報をお確かめのうえ、ご来館ください。ご利用のみなさまにはご不自由ご不便をおかけすることをお詫びいたします。

お問合せフォーム:https://shaunkyo.jp/contact/

電話:06-6947-7722

当館最新情報:https://twitter.com/Llibraryosaka

全林野文化資料室の資料移管・搬出作業

 1月30日(木)、館長・谷合が東京都町田市まで出向いて、「全林野文化資料室」の所蔵資料を当館に移管するための搬出作業を行いました。

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 作業に当たっては「市民アーカイブ多摩」(東京都立川市)を拠点に活動されている「ネットワーク・市民アーカイブ」にお願いして、ボランティアを募っていただきました。その結果、同会事務局の江頭晃子さん、運営委員の杉山弘さん(町田市立自由民権資料館学芸担当)に手伝ってもらえることになりました。他にも希望してくださる方も居ましたが狭い場所なため2人にとどめてもらいました。資料の扱いについてはプロのお二人、さすがに手際がよく、作業はすいすいと進んで、予定通りの時間内に終えることができました。

 ↓は段ボール箱を組み立てる杉山さん。次々と組み立てては、江頭さんが番号を記入していきます。庭にどんどん箱が積み上がっていきます。

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 「全林野」とは、全林野労働組合の略称です。国有林林業労働者と林野庁の職員を中心に1953年に組織された組合で、公務員労組として長い歴史を持っていました。1989年、全林野労働組合と民間組合である全国山林労働組合(略称「全山労」)が、産業別組織として全日本森林林業木材関連産業労働組合(略称「森林労連」)を結成しましたた。森林労連は、両組織の上部組織であり全林野と全山労の二つの組織が加盟していました。

 その後、2006年には長年にわたり分立状態にあった全林野と、日本林業労働組合(略称「日林労」)が共に組織を解散し、新たに全国林野関連労働組合(略称「林野労組」)を結成し組織を統一しました。今では、公務員組合の林野労組と民間の全山労がその上部組織として森林労連を構成しています。

 全林野は白ろう病などの職業病問題に取り組んだ組合としても有名です。

 その全林野の文化部長・国際部長を歴任されていた木村和(きむら・かず)さんが、全林野解散後に東京都町田市の自宅庭にログハウスを建てて資料室を設けました。しかし高齢となり、病を得て維持することが困難になりました。そこで資料移管先を求めておられたのですが、なかなか引き取り手が現れず、結局、エル・ライブラリーが引き取ることとなりました。

 しかし、大阪から町田市は遠く、搬出作業も大変です。2回にわたって谷合が資料調査をしたうえで、作業については多摩地方のアーカイブズ機関の方々にボランティアをお願いすることとしました。快く応じてくださったのが、江頭さんと杉山さんです。

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 2時間半の集中作業の末に、庭に積み上げた段ボール箱38箱と紙袋25個。残念ながらすべての資料を移管することはできず、一般市販図書などは置いていかざるをえませんでした。また、大きな作品も引き取れません。

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 こうして町田市から大阪市内のエル・ライブラリーに運ばれた資料は今、書庫内でこういう状態(↓)で置いてあります。これを全部開封して整理できるまでに何年かかるのか?! それでなくても未整理資料は段ボール箱に数百箱分は滞貨しているというのに。と、絶望的な気分にも襲われます。

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 移管した資料の中には以下のようなものがあります。全部を確認できているわけではないのですが、概要を記します。

 ・全林野文化部会議資料

 ・「働く仲間の写真展」入選作品などのアルバム

 ・木村さんたちが全国をまわって集めた「木こり歌」などの音源カセットテープ100巻程度。

 ・全林野国際交流関連の会議資料

 ・幻灯フィルム10巻程度

 ・白ろう病関係文書

 ・機関誌「ぜんりんや」

 ・全林野関係の労働者詩集

 ・労働者文化運動関係のミニコミ

 

 たくさんの写真を引き取ってきた中には、昭和20年代林業労働の現場を写した貴重な写真が何枚もありました。意外なことに女性労働者も何人も写っていました。

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 貴重な資料を私財を投じて守ってこられた木村和さんには深く敬意を表します。病床の和さんを支えておられる妻・裕子さんには、作業にあたってさまざまなお心遣いをいただきました。記して謝意を表します。

 そして、谷合の計画ミスにより作業日程が大幅に変更になるというご迷惑をおかけしたにもかかわらず、気持ちよく作業を担ってくださった江頭さんと杉山さんのボランティア精神にはただ頭が下がります。

 そして、今はアメリカで在外研究中の鈴木貴宇さん(東邦大学准教授)には、1回目の資料調査の折に同行していただきました。鈴木さんのご協力にも心からの感謝を。

 みなさまのおかげで、資料を次世代に伝える光が見えてきました。本当にありがとうございました! そしてこれらの資料をこれから一緒に整理していく当館スタッフのみなさん、館長の無茶振りを許してくださいませ~(谷合佳代子)

 作業後の記念撮影(↓)

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新着雑誌です(2020.2.28)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 3988号 2020.2.28 (201363272)

先見労務管理 No1623 2019.12.25 (201363074)

先見労務管理 No1624 2020.1.10 (201363108)

労働基準広報 No2019 2020.2.11 (201363132)

労働基準広報 No2020 2020.2.21 (201363199)

労働法律旬報 1953号 2020.1.10 (201363181)

賃金と社会保障 1747号 2020.2.10 (201363215)

旬刊福利厚生 No2288 2020.1.28 (201363165)

労働情報 No991 2020.3.1 (201363249)

 

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【中止】公開セミナー「社会問題資料を未来に繋ぐ 資料保全と活用」

【緊急のお知らせ】コロナウィルス流行の事態に鑑み、下記セミナーは中止となりました。(2020.2.25 15:38)

 

 関西大学経済・政治研究所が主催する2019年度第3回公開セミナー(関西・大阪の社会経済問題の歴史と現状研究班)を紹介します。

 エル・ライブラリーの特別研究員である黒川伊織が企画しました。館長谷合も登壇。参加費無料、どなたでもご参加いただけます。

【開催趣旨】

 社会問題/社会運動研究の基礎資料である一次資料は酸化・劣化が進み、アーカイブズ機関が所蔵する資料と、個人が所蔵するコレクションのいずれもが存亡の危機にある。これらの資料の保全・活用はいかにあるべきか。その活用のために資料所有者/研究者とアーカイブズ機関がなすべき使命を考える。社会問題/社会運動の研究に携わる人びとが、所属機関や立場の違いを超えて、資料を次世代に残し有効活用を図るための忌憚のない議論の場としたい。

日 時:2020年3月1日(日) 10:30 ~ 17:00
場 所:エル・おおさか(府立労働センター)5階研修室1
     〒540-0031 大阪市中央区北浜東3-14
アクセス:http://www.l-osaka.or.jp/access/

テーマ:「社会問題資料を未来に繋ぐ 資料保全と活用」

プログラム
10:30 挨拶(宇城輝人:関西・大阪の社会経済問題の歴史と現状研究班主幹)
10:35 趣旨説明(黒川伊織:関西・大阪の社会経済問題の歴史と現状研究班委嘱研究員)
10:45 講演「社会運動史に向き合うことの意味と可能性」(原山浩介:国立歴史民俗博物館
11:30 講演「社会運動資料との向き合い方」(三輪泰史:大阪教育大学名誉教授)
12:15~12:30 質疑応答
13:30 参加者リレートーク
15:00 休憩(エル・ライブラリーの修復資料展示の観覧)
15:20 講演「研究者の残した資料の活用実践例」(谷合佳代子:大阪産業労働博物館)
15:50 自由討論
17:00 終了

●聴講無料
●事前申込不要

2019年度第3回公開セミナー.pdf

 ●問合せ先 関西大学研究所事務グループ
〒564-8680 吹田市山手町3-3-35
TEL:06-6368-1179/ FAX:06-6339-7721
E-mail:keiseiken@ml.kandai.jp
主催:経済・政治研究所(関西・大阪の社会経済問題の歴史と現状研究班)

※3/1当日はエル・おおさか  06-6942-0001 にお問合わせ下さい。ただし、会場の行き方のみ対応のお問合わせに限る