エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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当館研究員編著「社会運動史研究のメタヒストリー」

 法政大学大原社会問題研究所の歴史ある学術誌『大原社会問題研究所雑誌』の2020年7月号に当館特別研究員・黒川伊織の責任編集による特集記事が掲載されています。

 全文pdfで読めます。

大原社会問題研究所雑誌 詳細ページ |

 当法人が40年にわたって編纂を続けている『大阪社会労働運動史』の監修者であった渡部徹先生を始め、多くの歴史家がその研究にどんな政治的バイアスをかけていたのかを鋭く問う特集です。本号の表紙書影と特集記事の目次は以下の通りです。

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大原社会問題研究所雑誌 741号 2020年7月号
【特集】社会運動史研究のメタヒストリー
特集にあたって――社会運動/社会運動史研究の120年  黒川伊織
社会主義運動史研究会から運動史研究会へ――伊藤晃氏インタビュー
渡部徹の歴史学――関西・社会運動史研究史序説  黒川伊織
転向に生きる苦悩――小林杜人の転向論に焦点をあてて  福家崇洋

  「特集にあたって」で、そのねらいを黒川は次のように述べています。

ある社会運動の正史が書かれたら,そのなかで周縁化された人びとによって対抗的な歴史が書かれるのは,自然なことである。この場合,問題なのは,どちらが客観的に正しいかでは必ずしもない。運動史叙述の言説空間の力学も,運動の空間の力学の一部をなしているのであり,その力の働き方を微視的に分析するとともに,その総体を巨視的に捉えることが必要なのである。「社会運動史研究のメタヒストリー」とは,運動史を書くという営みを当該期の運動の空間のうちに差し戻しつつ,その営みを含む運動の歴史を叙述しようとする試みである。当然のことながら,そのような叙述をしようとする書き手自身の立場性も,厳しく問われてくることになるはずである。

  今までありそうでなかった、歴史研究者の立場性について問うという「研究の研究」は書誌学やレビュー論文とはまた異なり、歴史学社会学に特有の「政治力学」に焦点が当てられています。また、本特集が歴史学者から社会科学者への問いかけであるという位置づけはスリリングなものです。ぜひ特集をご覧ください。(谷合佳代子)