23.職場新聞(16)男と女 その3
お互いに意識して、男性と女性がフランクに付き合えない職場もあった。特に男性の「からかい」や性的な目線に、多数派の女性は厳重に抗議している。
「ヒューと云うのはひやかしではない
俺達深夜番(注1)は君達先番(注2)の人が、出勤されるのが待遠しい、別に好きな人が来るからっていうわけでもないのだが君達が出勤される時間に成ると本当にほつとする。一晩中眼をこすつて機械とにらめっこ、誠につらいものだ。それで君達が工場に入って来ると俺達深夜番は実に騒がしく成る。それは君達もしつているとおりです。げれつ声でよんだり。ヒューと鳴らしたりする。これは決して、ひやかしているのではな(ママ)。実際そうゆう気持に成って来る。勤務時間から開放された時の気持はそれは、それは実にこころよいものです。」(綿・スフ紡仕上『じんし』2号3面)
「女性から男性え
抗議文
一、もう少し男らしく勇気を出す事
一、あまり私達を、ジロリジロリ見ないこと。
一、変な声であまりさけぶと女子は赤面しますから今後そのようなことのないように。
一、台え入って故障を直す時は男子の方から話しかけて下さい。そしたら女子も話しますから
一、作業中にはゾウリでバタバタするのはみっともないですのでズック靴を着用のこと」
(綿・スフ紡仕上『じんし』3号3面)
「朝先番で工場に入る
深夜番で仂いた人達はあちこちにかたまって何か話をしている。五時五分頃前先番と交替で帰って行く、その帰ったあと今日一日元気で一生懸命頑張ろうと思って台につこうとする、するとあちこちの戸板に、チョウクで落書がされて居る、「〇〇さんの色馬鹿だの、〇〇さんのパーだの又読むにもよめないような人を馬鹿したようなそれこそイヤラシイことをかいている。
深夜番の人たちはどんな気持でかいたものかしら、男の心理って私には解らないわ。C番で仂いている時は真面(ママ)くさって仂いてすましているくせに、かげではどんなことするか解からないわ。そのすまして仂いている時横顔を思いっきりなぐってみたくなります。それで深夜番からの話合いで男女仲良くするために、合同ソフト大会やろうなんて、これじゃなっちよらんよ、まったく‥‥‥‥職場を仲良く楽しくして行こうと思うだけでなくもう少し真けんに物事を考えてほしい。
組合活動も精紡から進んでやれる様に。」(綿・スフ紡精紡『ぼこぼこ』4号3面)
多人数職場だと、男性と女性が分かれてしまい、交流が難しい現実もあったようである。
「仲良くしよう!
みんなであいさつを
C番や深夜番は一般AB番とかけはなれている様になんだか冷たい感じがします。又行き合った時ぐらい朝なら「おはよう」とでもあいさつして下さったら皆んながこれから働くのもほがらかで楽しく働けるのではないでしょうか。他の職場の男子は皆話やあいさつをゆかいにかわしているのに精紡の男子はただ下を向いて通るだけでなさけないと思う。男子は男子なりにあっさりした方が良いではありませんか。これから深夜番C番あいさつからして行きましよう。私達運転番女性も実行して行きますからね。
女性代表して Aより」(綿・スフ紡精紡『ぼこぼこ』2号3面)
他方、個人的に男性と話をしただけで噂になる職場もあった。
「男子と話したらいけないの?
皆さん、男子の人と話したら、何故いけないでしょうか?私達の工場では男の人と話したら、つめたい眼で見る人が夛いようです、何ででしようか?どんな話をしているかもわからないで、いろいろな、うわさがすぐにひろがります、職場のことなどで話していても、つめたい眼でみていたら、良い気持はしません、そんな冷たい眼でみるのは一日も早くやめたいものです。同じ職場で仂く人が何故?話し合ったらいけないのでしよう、こんなことも、いろいろいろ話し合って見たら良いと思います。」(絹紡製綿『蛹粉の中で』3号3面)
かと思えばこんな大胆カップルも。
「ヤケルナア
♡私達排綿の職場でもたまには勤務中に男とネチャリンコをやっている人がありますが、私はぜんぜん異性ににが手な方ですから、勤務中にあんなたいどをみせつけるのもどうかと思うよ。ほんまに‼」(絹紡製綿『蛹粉の中で』1号2面)
(注1)深夜勤務は1952年から始まり、翌年には深夜専業の男子労働者の採用が開始された。、争議後は日勤との週交替制へと変更になった。1956年9月20日実施の彦根工場就業規則によれば、就業時間は、午後10時30分~午前6時となっている。文中の深夜番はC番(日勤)と深夜番の交替制で働いていた男子労働者のことだと思われる。
(注2)先番は二交替勤務の早い方の勤務で、勤務時間は午前5時~午後1時45分。
(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)
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