エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第20回 職場新聞(13)『ぼこぼこ』その2 

 『ぼこぼこ』には、機械や設備への不満が多い。

クリヤラー台はごめんだ!! 

  クリヤラには、二度とつきたくない。早くクリヤラーのボロ台をなくしてほしい。クリヤラーの為に、実は毎日泣かされている。今ごろはもう涙はでなくなつて、心の中はかきむしられるように腹が立つ!」

『ぼこぼこ』3号2面より

団結は結構 でも私の立場も察してね

 嫌!嫌!本当に嫌!!

 クリヤラー台は大きらい!!一本切れてすましているのなら可愛らしいけど、おとなりまで手をかけるんだもの。クリヤラー台はいつも団結?五六本ならまだいいこと、時には一メートル位向うまでひっかける、(中略)明日はうれしいニューまフィルだ。泣いてなんかいられない(後略)」

『ぼこぼこ』6号3面より

 近江絹糸で長く保全を担当した経験者へのききとりによれば、「糸切れが生じたとき、かつてはクリヤラー(先端にラシャ布を巻いた棒)という道具に、切れた粗糸の先端を巻きつかせていたが、そのときに出る綿ぼこりがほかの糸切れを誘発した。1950年代後半に、切れた粗糸の先端を吸い取るフリュート(ニューマチッククリアラーと言った)が装備されて、綿ぼこりが減り、糸切れも減った。」とある(注1)。

精紡機のクリーニング装置としては、当初、クリヤラローラ(木製ローラーにネルなどのクリヤラクロスを被覆したもので、ドラフトローラーに接圧され、回転により清浄させる)のみの方式が採用されていた(注2)。これが前述の「クリヤラー」という道具で、この方式の台がクリヤラー台であると思われる。1949年頃から精紡機用の糸切れ自動吸引装置が開発され、ニューマチッククリアラ、次いでニューマフィル装置(注3)が導入された。

 近江絹糸の社史にも、昭和30年代後半から40年代前半にかけて、生産綿糸を大手十大紡並みの標準規格品とするため、企業努力を行い、そのうちの一つとして「紡績作業で最も基本的な風綿吸収装置―ニューマフィルの完備、工場内の空調設備の完備」があげられている(注4)。

 『ぼこぼこ』の記事より、この時期の現場では精紡機の設備が新旧入り混じった状態であったことがわかる。

 

(注1)駒沢大学経済学部小林正人氏ホームページReserch『リング精紡機の保全

(2021.6.24閲覧)参照。

(注2)『わが国繊維機械の技術発展調査研究報告書Ⅰ(化学機械・紡績機械編)』(機械振興協会経済研究所,1889)224頁~226頁参照。

(注3)「ニューマフィル」は、「糸切れの際、放出される繊維端の処理装置で、フロント・ロールの下にあるフルートの小穴によって吸引し、共切れを防ぎ、繊維を一か所に集める。集められた繊維は開綿状態なので、再使用に便利で汚れ綿を生じない。品質向上と工場内空気浄化に有効な装置である」(井上孝『現代繊維辞典(増補改訂版)』株式会社センイ・ジャアナル,1968)

(注4)桧山邦祐『幾山河七十年 オーミケンシの歩み』(オーミケンシ株式会社,1988)242頁

(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

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