エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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三池闘争60年シンポジウムin関西

 1960年におきた「総資本対総労働の闘い」と呼ばれた「三池争議」から60年を迎える今年、大阪で以下のようなシンポジウムが開かれます。三池争議終結から3年後の三三井三池炭鉱で起きた炭じん爆発事故は戦後最大の労働災害であり、今もその後遺症に苦しむ人々がいます。

 シンポジウムではこの三つの出来事、すなわち、争議、炭じん事故、後遺症への補償獲得闘争、という今に続く問題を取り上げます。

【集会概要】
「三池闘争60年シンポジウムin関西」
炭じん爆発と高次脳機能障害 ―今につづく闘い―
日時:10月17日(土)10時20分(開場10時)16時30分終了
場所:大阪市立阿倍野区民センター
資料代:1,000円
主催:三池闘争60年シンポジウムin関西実行委員会

<スケジュール>
第1部(10時20分)映画「ひだるか」上映
第2部(13時30分)三池争議を振り返る映像・講演
第3部(15時)炭じん爆発と高次脳機能障害

新着雑誌です(2020.9.17)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 3999号 2020.9.11 (201384211)

労務事情 No1411 2020.9.15 (201384336)

ビジネスガイド No891 2020.9.10 (201384278)

ビジネスガイド No892 2020.10.10 (201384302)

労働判例 No1224 2020.9.15 (201384369)

季刊労働法 270号 2020.9.15 (201384393)

労働法学研究会報 No2724 2020.9.1 (201381195)

労働経済判例速報 2417号 2020.8.10 (201384351)

労働経済判例速報 2418号 2020.8.20 (201384385)

労働経済判例速報 2419号 2020.8.30 (201384187)

労働経済判例速報 2420号 2020.9.10 (201384245)

 

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『大阪砲兵工廠年表』

久保 在久著(2020年9月/耕文社/A4判170頁)

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 「大阪砲兵工廠」とは、戦前日本最大級、アジア最大級の兵器工場で、大阪城周辺で事業を開始して、2019年で150年という節目となる。

 著者久保在久は、1987年11月に『大阪砲兵工廠資料集』(上・下、日本経済評論社)、2019年5月に『大阪砲兵工廠物語』(耕文社)を発刊し、本書はその第3弾とも言える。他にも、『大阪社会労働運動史』(社会運動協会)の第1巻・2巻でも、大阪砲兵工廠に関わって、久保が詳細に執筆している。

 『大阪砲兵工廠資料集』は、「日本産業技術史学会第1回資料特別賞」受賞という高い評価を得て、朝日新聞毎日新聞の「ひと」欄に掲載された。

 2019年の『大阪砲兵工廠物語』については、当欄でも紹介したが、今回の「年表」は、集めた新聞記事を中心に作成し、『物語』で書き切れなかった事項について、「年表から読み取れること」として補強されている。

 これらの一連の研究蓄積が、― 大阪砲兵工廠が、東洋一といわれる規模の軍需工場であり、長年の戦争に次ぐ戦争を重ねてきた近代史の中で、その大きな一翼を担ったことには相違ないが、一面、その過程で、大阪の街の産業の発展や町の形成にも寄与するところが大きかったのではないか、との視点でいくばくかの事実を明らかにできたのではないかと思っている ― と著者は述べている。

 『年表』は、1870(明治3)年~1945年の敗戦と陸海軍両省廃止までの75年間の、大阪砲兵工廠に関わる出来事を詳細に刻んでいる。その出典は、朝日・毎日両新聞をはじめとして、日本立憲政党新聞、東雲新聞、大阪平民新聞、大阪鉄工組合機関紙、日本労働新聞、官業労働新聞、等の各新聞の他、『日本労働年鑑』(大原社会問題研究所)の各年版、『大阪砲兵工廠沿革史』(1902年/大阪砲兵工廠)、『大阪工業会50年史』(1964年)、『日本における資本主義の発達年表』(楫西光速、大島清、加藤俊彦、大内力編/東京大学出版会/1953年)、等々、広範囲にわたって深く探求されている。

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<『年表』から読み取れること>

 見出しだけの紹介になるが、― 「多彩な訪問者」、「多発した労働災害」(作業中の爆発事故で50人もが死亡した1880年の事故は『物語』で記述されているが、1925~1930年には、毎年200人以上の「公傷病者」が、多い年には300人近くに達している。資料編として、「大阪砲兵工廠各工場の衛生的所見」ほか、職工の労働実態を掲載して、どれほど過酷な働かせ方であったかに、著者の想いが伝わる)、「植民地の同化政策」(台湾や朝鮮の植民地政策に大阪砲兵工廠への旅行見学が利用された)、「報道統制」(日露開戦を前にして軍隊に関わる記事の禁止が官報号外で告知された)―

<著者が関わった二人のこと>

 八木信一との出会い― 陸軍直営の兵器工場である大阪砲兵工廠で労働組合「向上会」を結成して、大阪初のメーデー1921年)の総指揮者である八木信一について、没年はじめ不明な部分が多くて、気にかかっていたところ、古本屋で買った『寝屋川市誌』から町制時代の議員名簿にその名を見つけて、市役所に調べに行った。遺族の住所が判明し、養女鞆子さんを訪ねて、一年がかりで、父の思い出『八木信一伝』発刊にこぎ着けた。「大阪の労働運動史に大きな足跡を残した人物の等身大の実像が後世に残ることになったことは喜ばしいことである」と。そして、鞆子さんのご厚意で八木の時代の組合旗や貴重な資料が大阪社会運動協会に寄贈され、永年保存されることになった。

 高田鉱造の回想― 戦前は3・15事件で検挙され、戦後は「大阪労働運動史研究会」を主宰した、大阪労働運動史研究の重鎮であるが、この人の聞き書きも久保が担当し、1991年自伝『一粒の種』の出版に至った。この高田鉱造も一時期、大阪砲兵工廠で働いていて、「向上会」にも加わったが、その語りが興味深い。

「まだ明確な社会主義思想をもっていたわけではなかったが、御用組合のようなかたちで発足した向上会には義理で加盟しただけで、何の関心ももたなかったというのが正直なところだった」と。字数の関係で高田氏について詳しく言及できないが、エル・ライブラリーの「高田文庫」も高田鉱造氏からの寄贈資料である。

 

 以上、大阪砲兵工廠に関わる一連の丹念な掘り起しと著述はもちろん、この二人の先達との関わりをはじめ、多くの社会労働運動史刊行への関わりなど、歴史を刻み、語り伝える並々ならぬ事跡は、まさに頭のさがる「ライフワーク」であり、後に続く者にとって、心からの謝意を届けたい。

※本書は、エル・ライブラリーで割引購入することができる。

 『大阪砲兵工廠物語』税込み定価1100円→1000円に

 『大阪砲兵工廠年表』税込み定価1500円→1300円に

(伍賀 偕子<ごか・ともこ> 元「関西女の労働問題研究会」代表)

新着雑誌です(2020.9.10)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労務事情 No1410 2020.9.1 (201377835)

人事実務 No1212 2020.9.1 (201377868)

企業と人材 No1091 2020.9.5 (201377892)

月刊人事マネジメント 356号 2020.8.5 (201384203)

月刊人事マネジメント 357号 2020.9.5 (201384237)

労働判例 No1223 2020.9.1 (201384179)

労働基準広報 No2037 2020.8.11 (201384260)

労働基準広報 No2038 2020.8.21 (201384294)

労働基準広報 No2039 2020.9.1 (201384528)

 

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当館紹介が掲載された本2冊

 最近半年以内に出された図書のうち、当エル・ライブラリーの情報が掲載されているものを紹介します。

 まずは先月出版されたばかりの『専門図書館ガイドブック 課題解決のための』(専門図書館協議会私立図書館小委員会編、読書工房発行)より、当館の紹介ページを写真でご覧ください。目次では「子ども・教育・社会・人権・女性・福祉」にカテゴライズされています。

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 本書は一般の利用者にはなかなか目に留まりにくい、しかし専門性の高い資料を所蔵し、独自のレファレンス能力を持つ専門図書館の存在を広く知ってもらえるようにと編纂されました。レファレンス事例や専門図書館員のインタビューも交えた構成は読み物としても楽しめる工夫がなされています。

 そしてもう一冊は今年の3月に出版された『図書館施設論』(中井孝幸ほか共著、日本図書館協会)という司書課程用の教科書です。この教科書の22ページに当館の閲覧室の写真が掲載されました。スペースが狭くて財政基盤が脆弱という特徴をもつ図書館の典型として選ばれたようです(苦笑)。(谷合佳代子)

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住友ゴム闘争 アスベスト被害者にあやまれ!命をかえせ! 

ひょうごユニオン 住友ゴム退職者分会(2019年10月/私家版/A4判132頁)

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 本書は、アスベスト被害訴訟を14年間闘い続けて、裁判闘争に勝利した記録である。

 住友ゴム闘争は、2005年7月、中皮腫で死亡した夫の死因について「45年間働いた職場でアスベストを吸った筈。中皮腫と仕事の因果関係を調べてほしい」という森田さんの相談から始まった。会社への追及の委任状とともに相談を受けた、元同僚の白野・正木の2人は、住友ゴム人事総務に詰問したが、回答は「建屋にも原材料にもアスベストは使用していない。住友ゴムの作業歴と悪性中皮腫との因果関係は不明」というものだった。

<団交権を認めさせるのに5年―退職後の団交権に初の司法判断>

 そこで、森田さんの遺族と2人の元従業員が、2016年10月に個人加盟の労働組合「ひょうごユニオン」に加入して、「住友ゴム分会」を結成し、以下の3点を要求して団体交渉を求めた。要求内容は―①アスベストの使用実態をあきらかにすること、②退職労働者の健康診断を実施すること、③企業補償制度を設けること―である。

 会社は「組合員が従業員ではない」として団体交渉を拒否したので、直ちに兵庫県労働委員会に提訴したが、2007年7月にユニオンの申し立ては却下された。ユニオンは団体交渉の範囲を極めて狭めたこの命令の取り消しを求めて、2007年12月、神戸地裁行政訴訟を提起した。神戸地裁アスベスト被害退職者の団体交渉応諾義務を認める初の司法判断を下した。県労委と会社は判決を不服として控訴したが、大阪高裁も一審判決を支持して団交応諾義務を認め、応諾義務の基準を示した。

 それでもなお、県労委と会社は最高裁に上告して争いを続けた。2011年11月、最高裁は上告を棄却して、大阪高裁判決が確定した。団体交渉を認めさせるのに、実に5年もかかったのである。やっと会社を席に着かせて団交を開始。その要求は、―①アスベスト被害者への謝罪、②団交拒否への謝罪、③アスベストの使用実態を明らかにすること、④全退職者への健康診断の実施、⑤これまでの健康診断内容の開示、⑥石綿災害特別補償制度の見直し、⑦胸膜プラークに対する補償―の7項目だった。

<損害賠償を認めさせるのに6年半―司法における初の損害賠償>

 しかし交渉は平行線のため、2012年12月に、神戸地裁アスベスト被害者5名(中皮腫2名、肺癌3名)の遺族が損害賠償を求めて提訴。続いて第2陣として2016年1月に2名(石綿肺がんと石綿肺)が提訴し、2つの訴訟が併合されて、被災者7名、原告23名の集団訴訟となった。神戸地裁判決を不服として原告・被告双方が控訴して、大阪高裁判決において、原告全員の勝訴を獲得するに至った。一審では、肺がんの2名については、労災認定において業務上認定がされているにも関わらず、「ばく露量が少ない」と請求を棄却したのに対して、高裁判決では、「肺がん発症が神戸工場での勤務に起因することが高度の蓋然性をもって証明された」として、救済された。さらに注目されたのは、死亡した2名の消滅時効について、「団交拒絶は不適切であり、そのことが被災者らの適切な救済を受けることを困難にした」として、債権の存在を認め、一審に続き、消滅時効について新たな司法判断が確定したのである。会社側は控訴を諦めざるを得なかった。

 

 以上、14年間に及ぶこの闘いは、アスベスト被災者とその家族に大きな自信と励ましを与えるものである。報告集にはそれを支えた大阪労働者弁護団7名、ひょうごユニオンとひょうご労働安全センターからのメッセージや、分会ニュース・迫力あるビラが収録されており、いくつもの教訓が読みととれる。

 退職して雇用関係が切れても、就労中のアスベスト被害への責任を企業に粘り強く追及する闘いは、座して司法判決を待つのではなく、個々の被災者の労災認定掘り起しや、会社を包囲する世論づくりのための数えきれないビラまきの蓄積、法廷での証言者獲得に示される、会社の組合つぶし・差別攻撃に節を曲げずに闘い続けたことへの仲間からの信頼など、「あらためて私たちに諦めないこと、闘い続けることの大切さ」(ひょうごユニオン委員長メッセージ)を伝えている。そして被災者全員の補償救済に向けた闘いは今も続いている。(伍賀 偕子<ごか・ともこ> 元「関西女の労働問題研究会」)

当館特別研究員の著作などを紹介する記事

 当館の黒川伊織特別研究員も編集および解説に携わった『時代に抗する』についての紹介記事を館長谷合が『京都部落問題資料センターニュース』59号(2020年4月25日発行)に執筆しました。 

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 本書の紹介はすでに当ブログにも掲載しました。今回の『京都部落問題研究資料センターニュース』では、『時代に抗する』の後に発行された『杉本昭典と尼崎の政治・労働運動』と2冊セットで杉本昭典さんの伝記事項について紹介しています。特に、京都部落問題研究資料センターゆかりの師岡佑行さんとのかかわりをピックアップしています。

 この「ニュース」全文はWEBサイトで読めますが、配布用に頂戴した残部が5部ありますので、ご来館いただければ希望者に差し上げます。

http://shiryo.suishinkyoukai.jp/memento/m_pdf/t59.pdf