エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

ブログ記事の引用転載を希望される方は、https://l-library.hatenablog.com/about をご確認ください

所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

30.サークル誌(2)

 人権争議直後に華々しく活動していたサークルは、争議開始後約2年のうちに活動が行き詰まり、多くが解散した。理由としては、サークル活動を行う人と一般組合員との溝、サークルの運営上の問題等が挙げられているが(注1)、一方で、1955~1956年にかけて、職場単位のラクガキ運動が進められ、表現活動の現場が各職場へと変わっていったことが指摘できる。

 1956年度の彦根支部の『専門部活動方針』には「サークルを職場に解消し、職場の独特の文化的文学的活動をまきおこせ!」と記載されている。

 サークル誌の第二の資料群はこの時期のもので、『ひの木』(製綿A番文芸グループひの木会)、『だるま詩集』(人繊仕上ダルマグループ)の2誌の職場サークル誌が存在している。

『ひの木』N1(【1957年】7月)

『だるま詩集』【1957-1958年】

 その後、1957年末~1958年にかけて企業再建に関する闘争方針を巡って、労働組合は二つに分裂した(1958年10月再統一)。第三の資料群は分裂中または統一後に創刊されたサークル誌である。『トロッコ』(トロッコ文芸集団)、『いしころ』(近絹彦根文芸集団)、『むぎ』(麦文芸集団)『レール』(レールの会)の4誌が存在している。

『むぎ』Ⅱ(1959年2月)

 人権争議中・直後、職場闘争が盛んであった時期、労働組合分裂後の三つの時期の資料群を通して、ほとんどのサークル誌が生活記録や随筆、詩、俳句、短歌等の文芸作品を主体としている。これらの作品そのものが当時の労働者の文学として研究対象となるが、歴史資料としても、近江絹糸の労働者や労働組合の状況を読み解くことができる貴重な史料である。

(注1) 『1956年度第一回教文部長會議のまとめ』(1956年7月開催, 辻󠄀保治資料)8-9頁

(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

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新着雑誌です(2022.4.25)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 4034号 2022.4.22 (201420379)

企業実務 No853 2022.2.25 (201420429)

労働基準広報 No2096 2022.4.21 (201420403)

労働法学研究会報 No2763 2022.4.15 (201420411)

地域と労働運動 259 2022.3.25 (201420445)

月刊人事労務 No398 2022.3.25 (201420437)

 

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『大学的大阪ガイド ―こだわりの歩き方』

 当館館長・谷合も筆者の一人である新刊書を紹介します。

『大学的大阪ガイド ―こだわりの歩き方』大阪公立大学現代システム科学域 編、住友陽文, 西尾純二責任編集 昭和堂 2022.4 412ページ 定価2,640円(税込)

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 「はじめに」において、責任編集者の住友陽文が本書の構成について “あまたある「大阪ガイド」に屋上屋を架すのではなく、大学ならではの「大阪ガイド」をつくるということ” に留意したと述べています。そのため本書には環境、公共性、多様性という3つの柱が立てられています。それらは以下の目次第1部から3部のタイトルに表出しています。

 特に第2部については、とあるシンポジウムでの谷合の発言が「パブリックというのは設立主体が公立なのか私立なのかにかかわらず、その機能によるところが大きく、さまざまな設立主体が入り交じって全体として公共的な働きをするという将来の社会への展望を示していた」ことに大きな示唆を得たということです。この詳細は谷合が執筆した第2部巻頭の「大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)――私立公共図書館という存在」をお読みください。

 まずは目次を紹介します。

はじめに  住友陽文
第1部 自然と人為―環境とは何か
泉北丘陵の自然―外来植物と人のくらし  中山祐一郎・木村 進
〈コラム〉生き物のすみ場所としての堺市域――堺市レッドリストにおける要注目生態系としての視点から  佐久間大輔
大和川の鳥類、哺乳類、両生爬虫類  和田 岳
大阪産(もん)魚介類の調理文化と魚食普及  黒田桂菜
難波の葦の物語――古典文学の中の大阪  青木賜鶴子
浪華八百八橋の変遷  阿久井康平
原子炉と地域社会――熊取町京都大学複合原子力科学研究所  住友陽文

第2部 社会・文化と行政――公共性とは何か
大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)――私立公共図書館という存在  谷合佳代子
〈コラム〉リバティおおさか(大阪人権博物館)  吉村智博
〈コラム〉今は無き、あの千里万博公園にあった大阪府立国際児童文学館  大橋眞由美
〈コラム〉大阪樟蔭女子大学 田辺聖子文学館  中 周子
見せる/魅せる仕掛け、博覧会とミュージアム  福田珠己
萩原広道『源氏物語評釈』と近世大坂の出版  青木賜鶴子
大坂の学芸史――円珠庵から懐徳堂へ  西田正宏
大阪の高等教育機関公立大学  山東 功  
モノづくりの街 東大阪の進化プロセス――独立創業から企業間ネットワークへ  水野真彦
大阪/新世界と「ディープサウス」の誕生――近代大阪秘史の一断面  酒井隆史
公営住宅が多い街・大阪――ハシゴをのぼらない暮らし方の可能性  西田芳正

第3部 イメージと多様性―「大阪」とは何か
大阪方言の地域的多様性とその背景  西尾純二
〈コラム〉南大阪方言の謎解きと蛸地蔵伝説  西尾純二
人形浄瑠璃文楽と大阪  久堀裕朗
生駒の神々と近代の大阪  秋庭 裕
忠孝精神を売りに地域づくり――萱野三平旧邸保存運動  住友陽文
阪田三吉とその表象――大阪の「自己欺瞞」としての  酒井隆史
あとがき  西尾純二

 これだけ多方面にわたって「大阪」が論じられている点に瞠目すべきでしょう。執筆者のほとんどが大阪公立大学*1の教員であり、それぞれの専門領域から「大阪」について述べられています。

 各節は独立しているため、どこからでも読めます。実家が東大阪市の町工場である私にとっては、第2部で展開されている東大阪の産業集積の歴史に興味をそそられました。また第3部の大阪弁の多様性について書かれた部分も、「そやそや」と首肯しながら読んだり、反対に「こんな大阪弁、知らんわ」と首をかしげながら読んだりと、普段何気なくしゃべっている言葉の不思議さに心を動かされました。

 自然科学・社会科学・人文科学の総合知の賜物としての本書は、一つずつの論考が他の分野の論考につながっていく広がりを見せています。知っているようで知らない大阪、新発見の大阪、そして学問的には大阪がどのように見えているのか、さまざまな大阪の姿をぜひ本書で楽しみながら学んでください。(谷合佳代子)

*1:大阪府立大学大阪市立大学が統合されて2022年4月1日に発足

新着雑誌です(2022.4.17)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 4033号 2022.4.8 (201420361)

労務事情 No1446 2022.4.15 (201420338)

ビジネスガイド No918 2022.5.10 (201420312)

労働経済判例速報 2473号 2022.4.10 (201420395)

労働判例 No1259 2022.4.15 (201420304)

労働基準広報 No2094 2022.4.1 (201420197)

労働基準広報 No2095 2022.4.11 (201420221)

賃金と社会保障 1798号 2022.3.25 (201420254)

賃金と社会保障 1799号 2022.4.10 (201420288)

 

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メルマガ500号記念プレゼント

 このところ、何冊も新刊本を恵投いただいています。そのうち、複数を頂戴した図書について、当館メールマガジン読者にプレゼントします。

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 本日発信するメールマガジンが記念の500号となります。今からでも読者になっていただければ、500号と501号でプレゼントの案内をしますので、ご応募できますよ~♪ 応募者多数の場合は抽選します。

メールマガジン受信ご希望の方は以下のリンク先フォームからお申込みください。「メルマガ受信希望」と書いてメールアドレスと共にご記入ください。

お問合せ - エル・ライブラリー

 

今回読者の皆様にお贈りするのは、下記3冊です。

① 小田康徳著『明治の新聞にみる北摂の歴史』神戸新聞総合出版センター 2021年9月 A5判310頁 2200円+税  紹介文はここ

熊沢誠著『スクリーンに息づく愛しき人びと 社会のみかたを映画に教えられて』耕文社 2022年4月 1800円+税 (紹介文は近々掲載予定)
労働政策研究・研修機構編『近江絹糸争議斡旋経過 中央労働委員会による』労働政策研究・研修機構 2022年3月 1800円+税 (紹介文は近々掲載予定)

新着雑誌です(2022.4.7))

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労務事情 No1445 2022.4.1 (201419975)

企業と人材 No1110 2022.4.5 (201420007)

賃金事情 No2845 2022.4.5 (201420031)

月刊人事マネジメント 376号 2022.4.5 (201420122)

人事実務 No1231 2022.4.1 (201420064)

労働判例 No1258 2022.4.1 (201420098)

月刊人事労務 396号 2022.1.25 (201420155)

地域と労働運動 257 2022.1.25 (201419959)

 

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「読売新聞」に労働遺産認定委員としての館長コメントが掲載されました

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 世の中はウクライナでの戦争に耳目が集まり、それはそれは悲惨な状況が連日報道されています。図書館は平和の礎の一つと考えている私はこの状況に何ができるのかと思いをめぐらせています。図書館に戦争を止める力はありませんが、戦争に至らない道を探す知識の宝庫として、過去の記録や先人の知恵をアーカイブすることが図書館の使命と考えます。

 さて、そのような折ではありますが、今年1月に「日本労働ペンクラブ」が初めて選定した「労働遺産」が発表され、認定証が公布されました。栄えある第1回の労働遺産に認定されたのは以下の2件です。

ⅰ 川崎・三菱大争議など大正時代の関西労働運動の記録
ⅱ 近代的労働運動発祥の地記念碑と遺構

 認定証はこれらの労働遺産を所有、管理する下記4団体に交付されました。
・法政大学大原社会問題研究所(東京都町田市)
賀川豊彦記念松沢資料館(東京都世田谷区)
・賀川記念館(神戸市)
一般財団法人日本労働会館友愛労働歴史館

 労働遺産の詳細はこちら

 当館館長・谷合は労働遺産認定委員の一人として1年間の協議に参画してきました。そして、労働ペンクラブ関西支部・森田定和代表が神戸の賀川記念館・馬場一郎館長に認定証を交付する場にも立ち会いました。

 このたび、読売新聞大阪本社の辻阪光平記者が記事を書いてくださいましたので、皆様にお知らせいたします。著作権保護のために本文を全部は読めないようにしていますが、最後に谷合の言葉が掲載されていますのでご笑覧ください。

 また、これに先立ち、日本労働ペンクラブ関西支部支部通信』第35号(2022.1)に「日本労働ペンクラブ労働遺産認定「川崎・三菱大争議など大正時代の関西労働運動の記録」の意義について」と題して谷合が短文を寄稿しています。(谷合佳代子)