エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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新着雑誌です(2021.12.8)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労務事情 No1438 2021.12.1 (201414703)

人事実務 No1227 2021.12.1 (201414737)

企業実務 2021.11.25 (201414851)

労働判例 No1251 2021.12.1 (201414760)

労働法学研究会報 No2747 2021.8.15 (201414794)

賃金と社会保障 1790号 2021.11.25 (201414828)

 

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『大阪のモップル』『時代に抗して光を求めた人びと』

(A)治安維持法犠牲者名簿・大阪 : 時代に抗して光を求めた人びと / 治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟大阪府本部編.  治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟大阪府本部, 2021.   21cm ; 472p  (表紙と背のタイトルは「時代に抗して光を求めた人々」)

(B)大阪のモップル : 戦前大阪の弾圧犠牲者救援運動 / 柏木功著. 柏木功, 2021.  21cm ; 176p

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 戦前の治安維持法が如何に民衆の生活と権利を抑圧し、戦争国家へ総動員していったかは、多くの書籍で語られているが、今回は、大阪における「治安維持法犠牲者名簿」が克明に編纂された書と大阪における「弾圧犠牲者救援運動」について、掘り起こされた書を紹介する。

(A)

 本書は、「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟大阪府本部」の組織的取り組みによって、弾圧の犠牲となった大阪にゆかりのある人々の名簿が、一人ひとりの生い立ちや検挙にいたる経過まで丹念に刻まれた、歴史的に貴重な記録である。

 当同盟は1968年3月に結成され、その大阪府本部は82年3月に発足している。治安維持法の20年間に全国で、逮捕者数十万人、検挙された人68274人、うち起訴された人6550人(司法省調べ)、警察署で虐殺された人93人、獄死者は400人にのぼっている。

 本書では、大阪で活動した人、他県で活動した大阪出身者、検挙時大阪に住んでいた人を含めて、1597名もの人々の名簿が刻まれている(うち女性88名以上=名前からわかる分のみ)。もちろん在日朝鮮人・中国人も含まれている。

 掲載基準は、弾圧による犠牲者という一点のみで、思想や属性に関わらず、戦争と圧制に抗した人、その後運動から離れた人、沈黙を余儀なくされた人、運動を批判する言動に走った人なども含めて、評価はせず、事実のみを記載しただけである― と明記されている。

 出典は、主として官憲資料~『特高月報』『思想月報』『社会運動の状況』など~によるが、巻末の「参考文献」に掲載されている、数多くの事典・辞典類や、社会運動史、自伝・遺稿集・追悼集などを綿密に調査して集約されている。もちろん、わが『大阪社会労働運動史』(大阪社会運動協会)も含まれている。これだけの集約には、膨大な労力と時間を要したであろうことは推察できるが、それは「国が治安維持法犠牲者の実態調査をし、謝罪と賠償せよ」の国会請願要求(当同盟)を政府が無視したままだからで、改めて、怒りを共有したい。

五十音順に追っていくと、重大な事実、知らなかったことばかりで、自分の無知を知らされるが、わずかながら私の交流のあった人、私自身が聞き書きを出版した人も記録されている。当同盟大阪府本部調査顕彰委員会の膨大な尽力に心から謝意を表したい。

 そして、1597名の犠牲者名簿(400頁)以外に、資料編として、主に次の節も組まれている。

― ★治安維持法の略史と用語/★戦前の労働組合、農民組合、無産政党の運動史/★戦前大阪の社会運動史略年表 ― いずれもコンパクトに、的確に纏められていて、歴史の流れを把握するのに、貴重なテキストであると思う。

(B)

 本書は、治安維持法が猛威をふるった戦前、その犠牲者と家族の救援のために、自らの危険を顧みず、献身的に活動した人々の弾圧犠牲者救援運動を掘り起こした記録である。

 著者の柏木功は、(A)の「調査顕彰委員会」(14名)の一員でもある。

 犠牲者救援運動を担ったのは、「解放運動犠牲者救援会」であり、1928年3月15日日本共産党関係者への一斉検挙があった3・15事件のあった年に発足しているが、その準備の呼びかけは1月からなされていて、3月 6日には、第1回発起人会が開催されている。これは、『救援新聞』創刊号(1929.12.21「解放運動犠牲者救援会」発行)によっているが、著者は、~歴史の記述は官憲文書に頼っている。官憲文書は当局に都合よいように書かれた作文であり、真実でないことも多い~と、巻頭文で述べ、~自らも弾圧されながら、弾圧犠牲者と家族の救援に取組んだ人々が大阪にもいたことを知ってもらいたい~と、刊行の企図を記している。~ ほとんど資料の紹介で、それについての論考はしていない~と。史実の発掘のための尽力がどれほどのものであったか、推察の域を出ないが、弾圧の嵐に抗した人々の命をかけた軌跡は、今を生きる者たちにとっての生き方が迫られる重い共有財産である。

 表題の「モップル」は、救援会第2回大会(非合法で開催)で、加盟が承認された「国際赤色救援会」の通称(ロシア名の「国際革命戦士救援会」頭文字をとったもの)であり、この時点で「国際赤色救援会日本支部」=日本赤色救援会と改称し、大阪も「日本赤色救援会大阪地方委員会」(赤救)と名乗った。

 本書の主題は、書名の通り、大阪での救援運動である。大阪での3・15事件で検挙された人は160人で、6月中旬までに約320人検挙され、起訴されたものが99名とされている。「解放運動犠牲者家族救援会大阪支部」結成(4/27夜、小岩井浄方にて)の提唱文が、「大阪俸給生活者組合」と「大阪一般労働者組合」の両団体名で、4/24付で郵送されている。しかし、27日当日は、中心人物が検挙され、会議は流会になったという(内務省警保局『特別高等警察資料』第2号)。会議は流会させられたが、実際の運動は進められている。ガリ版刷りのミニパンフ『労働者農民と救援会』がそのまま掲載されているが、~おい!! おっさん! 俺たちの工場にも心がけのいー者を集めて班という奴を早速つくろうぜ!! ~と、大阪らしいアジリで、興味深い。会費は月十銭とのこと。

 この救援会は、検挙・再建・また検挙を重ね、1934年以降の活動は不明で、そして消滅と記述されている。このような過程でも、代表の小岩井浄は1932年の府議選に獄中から当選している。

 戦前、二つの「救援会」が並立して活動していて、当時からよく混同されていたし、戦後の記録にもその混同があって、本書で指摘されている。もう一つとは、1932年結成の「日本労農救援会大阪支部」(労救)である。こちらの国際組織は「国際労働者救援会」である。役割も、「労救」が、「労働者農民勤労大衆の自然的経済的災害貧困及び経済的政治闘争そのもの救援会である」に対して、「赤救」は、「白色テロル反対、白色テロルの犠牲者とその家族救援を本来の目的とする」と、記述されている。「労救」は「無産者医療同盟」との関係が深かったようである。このことは、同著者による『三島無産者診療所物語』(2020年)に詳述されている。(伍賀 偕子<ごか・ともこ>)

所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第21回 職場新聞(14)男と女 その1

 職場新聞は、ラクガキ帳に自由に書かれた内容を編集したものである。従って、今まで紹介してきたような職場の仕事の様子や労働者としての課題・要求のようなものの他に、日常生活についての、小さな呟きや悩みのようなものが、そのまま掲載されている。今回からしばらく、そのような彼女、彼らの生の声に触れてみたい。

 人権争議前の近江絹糸では、男女間の交流は厳しく制限されていた。

「―‥‥男子と女子の間ではほとんどしゃべったり交流したりとかはなかったのですか。

朝倉 ないです。男子と女子は遮断ですわ。下手に男と女の人がしゃべっとったら徹底的にマークされる。いわゆる男女関係というふうにとられるんです。職場の打ち合わせとか職場の連絡ですらそういうふうにとられたんです。‥‥」

『朝倉克己オーラル・ヒストリー』(注1)より

 

 人権争議終了後、この状況は大きく変化した。組合活動・サークル活動の活発化も相俟って、男女が普通に話したり活動したりできるようになったのである。工員のほとんどは中学校卒業後15歳で就職して故郷を離れ、寄宿舎での集団生活を送る。1957年上期の工員の平均年齢は男21.9歳、女19.8歳、平均勤続年数は男4年7カ月、女4年であるから(注2)、10代後半から20代前半にかけての若い男女の関心事として、当然、職場新聞の記事には恋愛や結婚に関するものが多数掲載されている。 

しかし、1956年2月末の統計(注3)によれば、彦根工場工員(日給者)の在勤者(帰省・病気除く)は、男465人、女1,793人であり、女性の数は男性の数を大きく上回っていた。

「咲かずにシボム 恋の花

私達の職場は、男子がスクナイので、恋愛が出来ない、男子と話する機会が少ないせいかなかなか良い(チャンス)が生れない。とくに後番(注4)など機械の音とホコリに、マミレておわれて仂いている。アゝッーボーイフレンドがほしい。アゝア歌も文句じゃないけれど、咲かずにしぼむ恋の花。」(絹紡製綿『蛹粉の中で』2号3面)

 とは言え、職場で顔をあわせるのだ。片思いの記事も多い。

「きたない職場に恋愛できないやろか

  私はただ一人好きな人がいる、でもこんな作業中をみられたら、どうしよう。

 でもやはりすきです、もうすこし自分でもおしやれしたい、でも職場であんなによごれたら、きれいにしたくてもお金をたくさんつかっても、ちよっとも効果はありません。

 だからきたない所で仂らいても賃金もやすいし、なんも楽しいことないわ。

こんどの賃金斗争に頑張って満足の出る賃金体系をかちとろう(注5)。

今度云子」(絹紡ガス焼『ほのお』6号2面)

 

あの人にホの字‥‥

今日もこんなこと話にきいたけど書こうか書かないかと思ったけれどラクガキだから、何でも書くわ。今日もあの人機械掃除していたわ。通った時てれくさかつた。又一人の友達が〇〇さん今日食事で合ったわと云う。男の人は分らない私はその人にあこがれる。これは片想かしらなんて笑っている」(綿・スフ紡精紡『ぼこぼこ』7号2面)

「アラ あそこにいるわ」

「アノ子か」

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綿・スフ紡精紡『ぼこぼこ』7号2面

 男子の片思いは女子に比べると、理想(妄想?)と現実のギャップが大きい。

「月がとっても青いから遠まわりしてかえろうと云ったら、彼女は、貴男は手癖がわるいからいやよと云った。俺はむかついて足もとにあった石を、足でけとばしたら、あんまりの力で近くでイモを売っているおっさんにあたって、追ひかけて来た。俺は彼女の手を引いて、遠まわりの道を急いだ。後を見たら、もう、おっさんはいない、俺の気持が、おかしくなって、彼女は俺にだきついた。力を入れた時、バリーッと云う音がした。フトンがやぶれている。何んだ‼夢か、チェつまんねえなー

翌朝夢にみた女の所に俺は行った。好きな彼女に夕べのことをどうしても話すことが出来なかった。あとで、ただ、愛の告白できない不愉快さを知って、亜然(ママ)としていた。…」(絹紡晒練『晒練職場新聞』7号4面)

 

一方には、こういう猛者もいる。

「結婚について

年頃に成れば皆結婚と云う二字が頭から離れない事ありませんか?若い人は別として二十才を過ぎると頭を悩ませることでしよう

私は特別かも知れませんが……

簡単に云えばボーイフレンドが二人いる 会社の人 もう一人は故郷の人 二人もよくをすると思われるかも知れないが… 会社の人は五年後に結婚しよう故郷の人は二年後私は思う故郷の人は離れているせいか別に氣にならない だけど便りだけは、うれしくよむ

会社の人は何時も 身近に居るせいか今になって別れてくれとはとても云えない、

その人はもちろん結婚迄考えている

私はどうしたら良いのでしよう

皆様方の良き考えをお聞かせ下さい

編集部より

みんなでこの人の惱みを考えてやって下さいませんか

ラクガキにでもかいて下さい。待っています。」(綿・スフ紡混打綿『ラップ』3号4面)

 

そして、マイペースに開き直っている人も。

「わてにも恋人が!

わてには恋人がいないさかい

はからへん

オレプレゼント

するよりももっか

食いけ」(絹紡ガス焼『ほのお』9号2面)

(注1) 『近江絹糸人権争議オーラル・ヒストリー(3)朝倉克己オーラル・ヒストリー』科研費報告書(2017)50p。

(注2) 梅崎修 ・南雲智映・島西智輝・下久保恵子「「家族賃金」観念の形成過程―近江絹糸人権争議後の交渉を対象に―」(『社会政策』第11巻第3号,2020)掲載の「表3 近江絹糸株式会社工員の平均年齢・勤続年数(1953~57年上期)による。出所は『有価証券報告書』。

(注3)『調査月報 NO.14』(近江絹糸紡績労働組合調査部,1956年2月,辻󠄀保治資料所収)掲載の昭和31年2月度部門別在籍調査表(日給者の部)による。

(注4) 後番は二交替勤務の遅い方の勤務で、時間は午後1時45分~午後10時30分。

(注5) 組合は①年齢給を重点にした、最低生活を保障する賃金体系を②26歳で結婚できる賃金体系を③定期昇給制度を含めた賃金体系を、の三原則を打ち出し、1956年11月、仮妥結した。

(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

新着雑誌です(2021.11.25)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

労政時報 4025号 2021.11.26 (201412558)

労働経済判例速報 2461号 2021.11.20 (201412582)

賃金と社会保障 1789号 2121.11.10 (201412616)

Posse Vol48 2021.8.10 (201412640)

労働基準広報 No2082 2021.11.21 (201412673)

 

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当館資料活用の成果、2件

 当館資料を活用した成果物を2件頂戴しましたので、紹介します。

 

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 一つは、近現代資料刊行会が発行された『昭和期の都市労働者:資料集』です(上の写真)。当館が資料を提供した4冊(第9巻、第10巻、第14巻、第17巻)を寄贈いただきました。

 このシリーズでは、「東京:日雇・浮浪者」25巻(昭和2年~63年)と「大阪:釜ヶ崎・日雇」18巻(大正14年~昭和62年)が刊行されています。セット販売でもあり、個人が購入することはめったにないと思われますが、公共図書館でもなかなか揃わないようです。

 同シリーズの詳細は版元のWebサイトからご覧ください。

近現代資料刊行会 ── 既刊情報

 

 そしてもう一つは、長らく当館資料を活用してくださっている長島祐基さんの最新論文の抜き刷りです。社会学研究会の『ソシオロジ』最新号(66巻2号(202号))(2021年10月)に掲載されました。

「生活」の演劇から「文化」の演劇へ――敗戦直後の関西の演劇運動の変化と課題 

 労働者の演劇運動について、敗戦直後の関西での実態を分析したものです。ブルーカラーとホワイトカラーの演劇の違いなど、興味深い点が多々あり、今後当館が文化運動の資料整理を進めていくうえでも参考になります。 

 長島祐基さんは「現在は地域の文化運動の実践として戦後大阪の労働者の演劇運動を取り上げ、演劇運動を通じた人々のコミュニケーションや主体形成を多角的に検討しています。また、研究手法の一環でアーカイブズ学を学び、市民活動資料や労働組合資料、文化活動関係の資料整理にも携わっています」という方です(Researchmapより

https://researchmap.jp/yukinagashima)。関東を拠点にご活躍ですが、しばしば来阪されて当館の資料を利用していただいています。

 当館では、遠方にお住いの方のために資料の郵送貸出もしています。一部に郵送できない貴重資料もありますが、できる限りご要望に添えるように心を尽くしております。サポート会員として当館の運営を物心両面でご支援いただける方には、さまざまな資料が貸出可能ですので、ぜひ会員へのご参加をご検討ください。

 もちろん、非会員の方にも資料はご利用いただけますので、お気軽にお問合せください。

所蔵資料紹介~辻󠄀保治資料(近江絹糸紡績労働組合関係資料)

連載第20回 職場新聞(13)『ぼこぼこ』その2 

 『ぼこぼこ』には、機械や設備への不満が多い。

クリヤラー台はごめんだ!! 

  クリヤラには、二度とつきたくない。早くクリヤラーのボロ台をなくしてほしい。クリヤラーの為に、実は毎日泣かされている。今ごろはもう涙はでなくなつて、心の中はかきむしられるように腹が立つ!」

『ぼこぼこ』3号2面より

団結は結構 でも私の立場も察してね

 嫌!嫌!本当に嫌!!

 クリヤラー台は大きらい!!一本切れてすましているのなら可愛らしいけど、おとなりまで手をかけるんだもの。クリヤラー台はいつも団結?五六本ならまだいいこと、時には一メートル位向うまでひっかける、(中略)明日はうれしいニューまフィルだ。泣いてなんかいられない(後略)」

『ぼこぼこ』6号3面より

 近江絹糸で長く保全を担当した経験者へのききとりによれば、「糸切れが生じたとき、かつてはクリヤラー(先端にラシャ布を巻いた棒)という道具に、切れた粗糸の先端を巻きつかせていたが、そのときに出る綿ぼこりがほかの糸切れを誘発した。1950年代後半に、切れた粗糸の先端を吸い取るフリュート(ニューマチッククリアラーと言った)が装備されて、綿ぼこりが減り、糸切れも減った。」とある(注1)。

精紡機のクリーニング装置としては、当初、クリヤラローラ(木製ローラーにネルなどのクリヤラクロスを被覆したもので、ドラフトローラーに接圧され、回転により清浄させる)のみの方式が採用されていた(注2)。これが前述の「クリヤラー」という道具で、この方式の台がクリヤラー台であると思われる。1949年頃から精紡機用の糸切れ自動吸引装置が開発され、ニューマチッククリアラ、次いでニューマフィル装置(注3)が導入された。

 近江絹糸の社史にも、昭和30年代後半から40年代前半にかけて、生産綿糸を大手十大紡並みの標準規格品とするため、企業努力を行い、そのうちの一つとして「紡績作業で最も基本的な風綿吸収装置―ニューマフィルの完備、工場内の空調設備の完備」があげられている(注4)。

 『ぼこぼこ』の記事より、この時期の現場では精紡機の設備が新旧入り混じった状態であったことがわかる。

 

(注1)駒沢大学経済学部小林正人氏ホームページReserch『リング精紡機の保全

(2021.6.24閲覧)参照。

(注2)『わが国繊維機械の技術発展調査研究報告書Ⅰ(化学機械・紡績機械編)』(機械振興協会経済研究所,1889)224頁~226頁参照。

(注3)「ニューマフィル」は、「糸切れの際、放出される繊維端の処理装置で、フロント・ロールの下にあるフルートの小穴によって吸引し、共切れを防ぎ、繊維を一か所に集める。集められた繊維は開綿状態なので、再使用に便利で汚れ綿を生じない。品質向上と工場内空気浄化に有効な装置である」(井上孝『現代繊維辞典(増補改訂版)』株式会社センイ・ジャアナル,1968)

(注4)桧山邦祐『幾山河七十年 オーミケンシの歩み』(オーミケンシ株式会社,1988)242頁

(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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新着雑誌です(2021.11.19)

今週の新着雑誌です。

新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。

賃金事情 No2837 2021.11.20 (201414463)

労務事情 No1437 2021.11.15 (201414604)

月刊人事マネジメント 371号 2021.11.5 (201414588)

企業実務 増刊号 No844 2021.7.20 (201414570)

企業実務 No849 2021.10.25 (201414612)

ビジネスガイド No911 2021.12.10 (201414513)

労働法学研究会報 No2753 2021.11.15 (201414521)

労働経済判例速報 2458号 2021.10.20 (201414638)

労働経済判例速報 2460号 2021.11.10 (201414430)

労働判例 No1250 2021.11.15 (201414497)

労働基準広報 No2081 2021.11.11 (201414554)

地域と労働運動 254 2021.10.25 (20141547)

 

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