24. 職場新聞(17)楽しみ
彦根工場は琵琶湖が近かったこともあり、ピクニックの記事が多く見られる。
「楽しかったピクニック
みんなで遊びに行った
うんと大きいニギリ飯を、たんとこしらえて、イモを二貫も持って……。朝の大雨は、私達のピクニックを祝福する様にからりと晴れた。
準備に取りかゝるみんなの手は軽やかに、あついあつい…「ほらこれにもうんと大きい梅干を」とにぎりめしを、「漬物はこのお重箱にね」と云う様に。かざり気もなくたゞ、お腹のふくらむ食物がたんと出来た。
町へ出たトッコウタイも汗をふきふき帰って来た、さあ出発だ、男は運搬車よ…と。
松原を少しこえた磯では泳ぐ人も少く…。さあー泳ぐ人は泳ぎな、ウチ等イモを煮てやるで」
モモもトマトも風呂敷にまいて、ビワコへ投げ込み、スイカもゴロンと……。 こんな調子で楽しい一日だった。(オワリ)」
(絹紡晒練『晒練職場新聞』13号1面)
他社の労働組合(下記は、野沢セメントとの交流会の記事)との交流もあったようだ。
「何も話さなかったけど
こんどはピクニックに
楽しかった交流会
私しは何も話さなかったけど、聞くのがおもしろかった。私しのグループには、ほがらかな人ばかり 私もほがらかな方だから、あんな人が大好き、苦しい事を話し合って、ほんとうに皆いっしよだと思って、自分もしっかり、職場の事、寮生活を、一日も早く、楽しい職場、寮にしなければと思った。男性はあっさりしたもので、きづのある人の事もくわしくおしえてくれた。ジェスチャーがあっておもしろい所が、あったと思う。いつかピクニックにいったりしたら、まだまだ話せるように、なるだろう。
野沢の人は、現場的にも、又年令の差があるため、お互いあまり話す機会が、ないとのことですね、そのため、会社、組合の、アツリョクが、強いとか、お互いに、団結して、仂きやすい現場にして、明るい生活を、きずき上げてください。」
(絹紡製綿『蛹粉の中で』14号2面)
何と言っても、食べることでは盛り上がる。
「もっぱら食気
誰か特攻隊にいきなとKさんが言う
あんたいきないきなと、言っている内にSさんがだったら私が いくから金出しなと出る すると今まで寝ていたはずの人まで のそりと起きて十三円出し パン(チョコ)を頼む、何しろ 一日食べなかったら三日も四日も食べなかったような気がするらしい。
その内 特攻隊が無事帰って来る。戦争の特攻隊は 一度行ったら帰ってはこれなかったが 絹糸の特攻隊は帰ってこないわけにはいかないらしい パンの袋をバリッと破ってパンにかぶりつくと 又 かぶりついた所が何とも言えない恋の味と書きたいのですが 残念ながらパン独特の味しかしませんね 食う話と出たらそれは、又、花の咲く咲く桜の花のように咲くね 第一にすし 次ボタモチ おしるこ まだまだ沢山出ますが ざっとこんなものが面に出る。話が着々と進み次には何か作って食べる事に話か(ママ)まとまる、こんな都合で私達、今、もっか食気で色気は全々と言いたいのですが?」(綿・スフ紡混打綿『ラップ』5号1面)
いつの時代も「推し」は心の友。
「私の好きな人 美空ひばり
山口ユリコ
大好きなひばりちゃん、どこが好きと云れても、みんな大好きなのでこまるけど、歌も映画もすばらしいのに、今の自分に満足せず、おとなしくコツコツやってる、あんなひばりちゃん大好きです。もちろんかをも好き、どことなくひかれる所があるの、」
職場会でこっそりレース編みしていたの、誰ですか。
「レース編、出そうよ
レース編の展示会が四月初めに行われます。ガス焼でも台の中などでさかんでしたね。冬中かかって編み上げた作品、えんりよしないで出しましょう、といっても「もうあの人にあげてしまったわ」とゆう人が有るかもね
これは残念! 江海絹子」
(絹紡ガス焼『ほのお』13号2面)
そして、やっぱり少しのときめきが大切。
「ダンスはたのしい
異性と踊るんやもん
「ウチこの頃何もかもいやになった。一ばん楽しい時はダンスしている時や、何もかも忘れて踊れるもん。」
食事休みの一とき、今年も終りに近づいたクリスマスの話に花がさいた。
「そうや、ウチもダンスはたのしいわ、どうして楽しいのやろ。」そこでみんなどうして楽しいのか考えはじめた。
「ウチは、思うんやけどやっぱり男の人と踊れ からやないやろか。」
「ウンそうや。そうやけどネ、男の人で自分の彼女とばっかり踊っている人スカンネ。」
「ウチはネすぐおぼえられてたやすく踊れるから楽しいのだと思うわ、それでいてアキがこないのね。」」
(綿・スフ紡精紡『ぼこぼこ』5号2面)
(下久保恵子 エル・ライブラリー特別研究員)
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