エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

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当館資料を活用した卒業論文が寄贈されました

 研究者の論文や博士論文などに当館の資料を活用いただくことは多いのですが、卒業論文ではなかなか使いきれない学生さんもおられるので、これまであまり活用事例はありませんでした。また、たとえ卒論に当館資料を使ったとしても、その結果を報告に来てくださり、さらにその卒論を寄贈してくれるというケースはありませんでした。

 このたび、恵贈第一号の卒論寄贈者、西原伊織さんと西原さんの卒業論文を紹介いたします。

「大阪交通労働組合婦人部におけるバス女子車掌の待遇改善運動」
近畿大学文芸学部文化歴史学科2023年度卒業論文(77,544文字)

西原伊織さん(左)と伍賀偕子さん

 西原さんは卒業論文を書くための資料を探して当館に来られました。そして、女性労働運動史ならこの人に聞け!と言える、生き字引の伍賀偕子(ごか ともこ)さんを私たちが紹介しました。伍賀さんは大阪総評オルグ、連合大阪スタッフ、そして当法人(大阪社会運動協会)専務理事を歴任しました。今ではエル・ライブラリーのボランティアスタッフとしてこのブログに「寄贈本紹介」を書いていただくなど、活躍されています。

 西原さんは伍賀さんから大阪の女性労働運動の歴史について聞き取りし、さらに大阪交通労働組合(大阪市交通局時代の市バスや地下鉄の従業員から成る労働組合。2018年以降は民営化されたOsaka Metroの従業員組合)の退職者たちに連絡をつけてもらって、資料提供などさまざまな協力を得ることができました。西原さんは無事に卒業論文を書き上げ、昨年末に伍賀さんにお礼をと、卒業論文を寄贈されました。さらにこの度は当館にも1部提供していただきました。

 卒業論文が図書館に寄贈されることは稀(まれ)と思われます。当館資料や人脈を駆使して書かれた卒論が、今後は当館資料として一般公開されていくという研究情報のサイクルが実現しました。西原さんは4月から鉄道員として働かれることが決まっているとのこと、この研究がこれからの職業人生の糧となることを期待します。

 なお、西原さんの論文の目次の概要は以下の通りです。大部な論文なので私はまだ拝読できていませんが(汗)、このように世代を継いで労働運動の歴史が語り継がれ、引き継がれていくこと、その仲介を当館が果たせたことに深い感慨を覚えます。(谷合佳代子)

目次
はじめに
第1章 バス車掌の基本的事項
 第1節 日本におけるバスの起源と女性の車掌への登用
 第2節 バス車掌の業務と実態
第2章 大阪市交通局と大阪交通労働組合のあゆみ
 第1節 大阪市交通局のあゆみ
 第2節 大阪交通労働組合のあゆみ
第3章 母体保護の権利を求めて―生理休暇、産前産後休暇、妊娠車掌軽業転換獲得―
 第1節 戦前と大阪交通労働組合結成当初の生理休暇獲得運動
 第2節 活用できない権利―提案される無給化案―
 第3節 始まる「母体保護月間」とモデル車庫での検証
 第4節 成し遂げた母体保護―生理休暇完全消化と妊娠車掌軽業転換の獲得―
第4章 女子定年制、退職処遇
 第1節 女子定年制、議論に上がる
 第2節 行われたアンケート―定年制か結婚等での退職処遇か―
 第3節 始まる団体交渉―女子にも55歳の定年制を―
 第4節 長引く交渉の中で―大交本部によって打ち出される女子車掌35歳定年―
 第5節 妥結される「33歳」定年制―退職処遇があればよい?―
第5章 服装検査、不足金弁納の全廃に向けて
 第1節 服装検査と不足金弁納問題への初期の運動
 第2節 明らかになる服装検査の実態―服装検査「全廃」闘争へ―
 第3節 服装検査実施要綱と服装検査「全廃」案の敗北
 第4節 服装検査は「全廃」から「条件闘争」へ
 第5節 神戸市交通局で発生した服装検査事件を受けて―服装検査全廃闘争へ―
おわりに
参考文献